お水取り椿の造り花のための和紙染めが佳境に

東大寺のお水取り (修二会) のおりに十一面観音にささげる椿の造り花のための和紙染めが佳境に入っています。

一日3kgの紅花を水に浸けこみ、翌日、黄水洗いをして、藁灰の灰汁で揉み込んで赤色を抽出し、米酢を入れて木綿に染め、それを再び少量の灰汁に入れて濃い紅色にして、次に烏梅で発色させます。

翌日、それを羽二重の上に流して、その上にのこった輝くような紅の泥 (艶紅) を集めて、和紙に塗ります。

4〜5回塗って濃き紅にします。3kgの紅花で和紙がようやく3枚染めあがります。

2月20日に東大寺に納めます。2月23日が椿の花の花ごしらえの日です。

艶紅 (つやべに/ひかりべに) の色と解説は『日本の色辞典』紫紅社刊 42ページに解説されています。

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法隆寺伝来国宝「四騎獅子狩文錦」復元完成

空引機で古式にのっとり織りあげていた獅子狩文錦が五完全、法隆寺に今日まで伝来しているものと同じ大きさ (高さ2メートル50センチ、巾1メートル39センチ) に織りあがり機からおろしました。

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紅鬱金(べにうこん)

小紋染の着物の裏地に使われている紅鬱金

小紋染の着物の裏地に使われている紅鬱金

大寒に入ってからはますます寒さが厳しくなってきている。このようなことは十数年来なかったように記憶している。私の工房では、紅花染を毎日のように行なっていて、「寒の紅」といわれているように、この寒さが逆にありがたく、今年は鮮やかな色に染まっている。

紅花染は単独で色を濃く染めていく、いわゆる韓紅色 (からくれないいろ) が、王朝の女人たちに愛されていたが、その一方で支子 (くちなし) などの黄色をあらかじめかけておいて、その上に紅花を染めて、朱がかった色にすることも行われた。黄丹 (おうに/おうだん) というような色名で知られ、高位の人に着用されていた。

江戸時代になると、支子に代わって鬱金 (うこん) が、大航海時代の波に乗って日本へ将来されるようになり、鹿児島あたりなどの温暖な地で栽培さるようになった。それ以後、染料としてよく用いられるようになって、あらかじめ鬱金で鮮烈な黄色にしてから紅花をかけあわせる「紅鬱金」が染められるようになった。

とりわけ江戸時代の中頃をすぎる頃より、黒や茶地に小紋染あるいは縞、格子といった地味な着物が流行するようになると、表とは逆に、裏には派手な「紅鬱金」の絹を付けた。まさに裏勝りにして楽しんだのである。

紅花は血行をよくする薬としても知られていて、肌にそれが付いていると、血のめぐりがよくなるとも言われていたからでもある。

日本の色辞典韓紅黄丹紅鬱金の色標本と詳しい解説は
日本の色辞典』をご覧ください。
吉岡幸雄・著 (紫紅社刊)

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椿(つばき)

椿図 尾形光琳筆 団扇絵

椿図 尾形光琳筆 団扇絵

この稿を書いているのは1月1日。私の工房の庭には山茶花の樹が二本植えられていて、今、それぞれ濃い紅と真白な花が満開である。

山茶花はツバキ科で、一見して椿かと見紛うことがあるが、近づいてみると葉が小さいのでそれとわかる。

花は山茶花のほうが早く咲いて、晩秋に彩りを添えてくれるが、ここ二、三日のあいだにもあちらこちらで、もう椿の花が蕾を少し開いているのを見た。椿は、「春」の「木」と書くように、早春に美しい彩りを見せてくれるが、冬の寒さが厳しい頃から、ゆっくりと咲いてくれて、花をゆっくりと楽しめるのがいい。桜のように、満開がほんの二、三日で、一瞬にその美しい姿を消してしまうようなあわただしさがない。

椿は、野や山に、そして庭に、花の彩りがないときに咲くから、いとおしく感じるだけではなく、私は、あの濃い常磐の緑の光沢のある艶やかな葉を、背景が透けて見えないほどにびっしりとあって、それをバックに紅や白の花を付けるから、よけいに眼に鮮やかに映るのではないだろうかと思う。

ツバキの語源には、葉が艶やかな様を表しているという説があるという。花も美麗だが、葉の色と形がより日本人の眼をひきつけているのである。

椿は、まさしく日本の花である。北海道を除いて全国に自生している。

この季節に尊ばれる花としては、梅があるが、これは中国より渡来してきたもので、「松竹梅」という、いわゆる寒さの厳しい時の三つの友「歳寒三友」というのも大陸から伝わった習わしである。

そうすると、日本の古来の、厳寒の折の友は椿の彩であったといえよう。

日本のデザイン3: 牡丹・椿日本のデザイン3: 牡丹・椿
吉岡幸雄 (編集)
紫紅社刊

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葡萄色(えびいろ)

葡萄の襲

葡萄の襲

文字どおり「ぶどう」色と読んでしまうが、この色名の由来は、古代から日本に自生していた「エビカズラ」(葡萄葛) にある。ヤマブドウの古名でる。

ヤマブドウは、山のなかに自生していて、少し開けて陽の射すところによく見られる。秋の終わりには葉が美しく紅葉し、実は紫色に熟す。

この実は食べても美味しく、ジャム、ジュース、ワインにもなり、今は東北地方では栽培もされている。

平安時代の物語や詩歌によく見られる色名で、やや赤味をおびた紫色という表現がふさわしいようである。

『源氏物語』「花宴」の巻では、主人公である光源氏が、右大臣邸の藤の花宴に招かれるが、まだ遅咲きの桜も残っている頃であったので、その出で立ちは、「桜の唐の綺の御直衣、葡萄染の下襲、裾いと長く引きて……」とある。

この葡萄色の襲は、四季に着用されるが、とくに冬から春にかけて着られたようである。ヤマブドウの生態からみれば、晩秋から初冬が好適かと思われる。

ブドウの汁で染めたものという説もあるが、平安時代に記された『延喜式』には、「葡萄綾一疋。紫草三斤。酢一合。灰四升。……」とある。紫草の根を臼で搗いて布袋に入れ、よく色素を揉み出した液で染め、椿の灰で発色させて紫の色を濃くするのである。

そのとき、紫草の根の液には少し酢を足しておく。それは、紫の色を赤味にする工夫である。

日本の色辞典葡萄色の詳しい解説は
日本の色辞典』をご覧ください。
吉岡幸雄・著 (紫紅社刊)

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