映画「紫」

工房の日常を克明に記録したドキュメンタリー映画「紫」を、10月20日 (土) から東京渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映して頂くことになりました。

この映画は、川瀬美香監督が工房の近くに住まいを借り、そこから通いながら撮られたものです。通常、撮影というと、カメラマンさん、照明さん、音声さん、ディレクターさんなど沢山のスタッフが工房に来られて撮るという印象だったのだが、監督は1人で全て撮影されました。

監督から私達に指示はなく、時折質問が入る程度で、この映画のもう一人の主人公、染師の福田さんは、途中でそれが映像の撮影である、と気付くまで、写真を撮っているのだと思っていた位自然な形で撮影は進められ、そのスタイルのお蔭で、映画「紫」は毎日毎日くり返される、「染司よしおか」の日常そのものの姿を映し出しています。

そして、この映画の大半を撮っていたのは2011年の冬で、その3月には東北の震災があった、私達にとっても感慨深い年です。自然から恵みをうけながら染織できるのが私達の仕事であり、またその偉大さをあらためて知らされたのもこの年です。映画の中で、当代吉岡幸雄の話す中にも「(地球の中で)ありがたく暮させてもらっている精神性がないと駄目」という言葉があり、その意味が、この映画に詰まっております。

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「石清水八幡宮に捧げる御花を和紙でつくって奉納しよう」@京都府八幡市石清水八幡宮

石清水八幡宮に奉納する御花神饌

完成見本の梅の台

心游舎は「日本の伝統文化が生き続けることができる土壌を形成したい」、そしてその核となる子供たちに「本物の日本文化にふれる機会を提供したい」という三笠宮彬子女王殿下の思いに共鳴した有志一同で設立した団体です。

今回はその心游舎の企画で、毎年9月に「染司よしおか」が石清水八幡宮へ奉納しております「御花神饌 (おはなしんせん)」、全部で12台あるその美しい「神様の花」のうち、梅の花を、子供たちと一緒に造りました。梅の花の赤は「染司よしおか」で紅花で染められたもの。茶色の枝は阿仙で染めています。

染和紙をお花の形に切ったものを重ねたり、穴をあけてシべを通したり…細かい作業のうえ、お米で作った糊で手がベタベタするなど、子供たちはとても苦労しながら、でも真剣に取り組んでくれました。少しずつお花の形に仕上がっていくと、表情は明るくとても喜びに満ちていました。

出来あがった梅の枝は、梅の木の生木に差して台に取り付けた後、奉納されます。


王朝のかさね色辞典王朝のかさね色辞典
吉岡幸雄・著 (紫紅社刊)
襲 (かさね) の色目240色を
伝統的な植物染の染め和紙で完全再現

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奈良文化財研究所「親子のための古代体験-植物で美しい色を染めよう」

染司よしおかワークショップ・蓼藍で染めた絹のストール

蓼藍で染めた絹のストール

奈良文化財研究所で育てられた蓼藍を収穫し、その葉を使って絹のストールを染めるというワークショップを行ないました。


当日20人の子供たちが、藍を収穫し、その葉っぱをちぎり、酢水の中ででもむ事約1時間。一生懸命もんだおかげでそれは美しく、澄んだ、この日の青空のような水色に染まりました。

古代から続く染め方を、子どもたちは純粋な気持ちで取り組み、その工程の大変さ、そして自然から得られるその色の美しさを実体験することによって感じ取ることが出来たと思います。

よしおか工房に学ぶ はじめての植物染めよしおか工房に学ぶ はじめての植物染め
吉岡幸雄・染司よしおか 監修 (紫紅社刊)
蓼藍植物染めも紹介されています。

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「花拵え (はなごしらえ) − 古都の染め和紙と花神饌 (はなしんせん)」@高崎市染料植物園

2012年4月28日〜6月3日、群馬県高崎市の高崎市染料植物園にて開催された「花拵え (はなごしらえ) − 古都の染め和紙と花神饌 (はなしんせん)」にて、染司よしおかの染和紙や造花が展示されました。

『古都、奈良や京都の古い歴史を持つ寺社の中には、染め和紙で季節おりおりの花や鳥をつくり、神仏に供える伝統行事を今も続けるところがあります。染織史家の吉岡幸雄氏率いる「染司よしおか」は、飛鳥天平の時代から江戸時代まで受け継がれてきた天然染料による日本の伝統色の再現や技の復活への取り組みを続けていますが、1200年前から絶えることなく行われているという奈良 東大寺の修二会 (しゅにえ)で十一面観音に捧げられる椿の造花、薬師寺の 花会式 (はなえしき)の造花4種、京都石清水八幡宮の供花神饌 (きょうかしんせん)には、その技がいかされています。』(展示会案内文より)

王朝のかさね色辞典王朝のかさね色辞典
吉岡幸雄・著 (紫紅社刊)
襲 (かさね) の色目240色を
伝統的な植物染の染め和紙で完全再現

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『王朝のかさね色辞典』吉岡幸雄 「はじめに」より

『王朝のかさね色辞典』吉岡幸雄著

『王朝のかさね色辞典』吉岡幸雄著

かさね色」あるいは「かさねの色目」という日本の色彩文化の流れをさぐるうえで重要な項目がある。

「かさね」は「重」または「襲」という漢字をあてることもある。

わが国は飛鳥、奈良時代を通じて政治体制のみならず文化芸術においても中国の随や唐の影響を大きく受けてきた。それが平安時代に入って菅原道真の進言による遣唐使の廃止 (894年) 以降、しだいにわが国独自の文化、つまり和洋文化が萌芽することになる。

衣裳においても同様で、平安時代もなかごろになると貴族たちの衣裳は今日のきものに通じる直線裁ちの形が完成したのである。直線裁ちにすることによって、下着から数えると三枚から五枚、多いものでは八枚を重ねて着ることができるようになった。「かさね衣裳」は、今日の表現では十二単とよばれるようなものとみてもいい。

そのかさね衣裳は、美しく染めた絹布一枚の大きさをわずかに変えて仕立てて、襟元、袖、裾を少しずつずらして着用する。そのずらすことによってできた色の重なりに、その季節に咲く草木花の彩りを表現するのが王朝貴族のたしなみであった。

そのころは必ずしも衣裳だけではなかった。調度では御簾や机帳が季節の色に染められた。また手紙やそれを包む和紙の彩りにも「かさね色」は多用された。

『源氏物語』や『枕草子』などを読むと、衣裳や文 (ふみ) の和紙の彩りに対する「季 (とき) にあひたる」というほめ言葉がたびたびみられる。春なら梅、桜、初夏には菖蒲、杜若、秋なら紅葉というように、季節にあわせてかさね色を選び工夫することが貴族の心がけになってゆく。

そうした色彩の組み合わせをどのように工夫するかは、その当人と仕える女房たちが季節の草木花をあれこれとおもいめぐらせて、染め色をおおらかに決めていったのである。

それがやがて平安時代の終わりころから、色の順序や衣裳の形などをあたかも決まりごとのようにする風潮がでてきた。いわゆる有職故実 (ゆうそくこじつ) である。さらに貴族社会から武家の時代になると、だれにもわかりやすいように教科書的に記された有職故実も出現するようになった。

平安朝文化へのあこがれは、武家の世も、江戸時代に町人が文化の担い手となっても、とだえることはなく、「かさね色」についての有職故実の研究もつづいた。

それらさまざまな説を集大成した『四季色目』(文政十三年=1830年刊) という書物があり、平安時代以降の研究の軌跡を通読することができる。

そのなかに記された色を、実際にどのような技法で染めたらいいのか戸惑いながらも、私は王朝文学などから色の記述を採出して、『延喜式』などを参考に往事の色の再現をつづけてきた。その間、日本の伝統色二百余色を植物染で再現した『日本の色辞典』や、『源氏物語』にあらわれた色をとりあげた『「源氏物語」の色辞典』も上梓した。

しかし、多くの伝統色を再現をしつつも、日本人の繊細な感性の結晶ともいうべき「かさね色」はつねに私の頭から離れないものであった。

『薄様色目』(下) と『かさねのいろめ』(上)

『薄様色目』(下) と『かさねのいろめ』(上)

そんななかで、あるとき「薄様色目(うすよういろめ)」という文化九年 (1812年) 発行の古書に出合ったのである。そこには、かさねの色目を染料だけでなく色刷木版の見本があった。色の保存状態もよかった。それをみているうちに、そこに記された二百四十種類のかさねの色を復元してみようという気持ちがわいてきた。

「薄様」とあるから、これは手紙やそれを包む和紙の彩りであることは承知していた。しかし色刷が刷られいることで日本人が育んできた季節の色の理解への近道ようにおもえたのである。しかも、それらは現代にも通じる配色の感性である。

この『薄様色目』を参考にしながら、和紙を中心とした植物染で王朝のかさね色へ挑んだのが本書である。

もっともそこに書かれてある記述や色刷がかならずしもすべて合点のいくものではなかったし、なぜこのような色の組み合わせかと不思議におもえるものもいくつもあった。そのため、私のこれまでの研究や経験をふまえてあらたに染色することにした。

さらに、ここに掲げたかさね色の再現にかんしては、二十一世紀の現代に生きる私の、植物染屋としての勝手な想像も多く入っていることを、冒頭で明らかにしておきたいとおもう。

平成二十三年十一月末日
吉岡幸雄

王朝のかさね色辞典王朝のかさね色辞典
吉岡幸雄・著 (紫紅社刊)
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