三種の灰 貴重な稲藁


「源氏物語の色」展覧会

「源氏物語の色」展覧会

私どもの工房では、冬に紅花を染めるのに使う藁灰を、毎年秋の終わりになると準備する。

しかし今年は一足早く、9月の下旬から稲藁を燃やしている。というのは、11月に東京日本橋高島屋で「源氏物語の色」と題した展覧会を催してもらうので、王朝の女人たちが愛した紅花の赤をこれから染めるためである。

稲藁は、今日では貴重品である。それは、コンバインで稲を刈るようになり、穂をとったあと、藁は小さく刻まれて畑にまかれて残らないからである。

昔のように、刈りとった稲を束にして、棚にかけて天日干しをする農家が少なくなった。

そうした昔ながらの、しかも無農薬有機栽培をしておられるところから、特別に稲藁を分けていただいている。

美しい色をあらわす植物の材料の調達も大切なことであるが、藁灰、そして紫を染めるための椿灰、さらには藍染の甕に入れる櫟 (くぬぎ) などの堅木の灰と、私どもの工房では三種の灰の調達にも神経を配っているのである。


カテゴリー: 工房の季節便り
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