稲藁を燃やす


稲藁を燃やす

稲藁を燃やす

秋冷の季節になって、朝晩は襟元や足先がだいぶひんやりしてきた。

もう工房では冬の支度にかかっていて、まず稲藁が運び込まれている。最近の農家では、稲をコンバインで刈り取って、すぐに細かく刻んで田に撒いてしまうので、むかしふうに、架稲に干して天日で乾燥させてから収穫する農家の方にとくに頼んで、稲藁を確保している。

工房の庭先の竹林に囲まれた場所に、高さ約1メートルのカマドが設えてあって、毎朝、その「貴重」な稲藁を燃やす。白い煙が竹の間から漂ってきて、玄関先を掃く弟子たちを包む。私の書斎にもそのちょっと懐しいような匂いが流れてくる。毎年くりかえされる、晩秋の朝の光景だ。

この稲藁の黒灰づくりは、寒の紅花染に欠かせない前奏曲のようなものである。


カテゴリー: 工房の季節便り
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