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「刈安の染め」については、
『自然の色を染める』紫紅社刊 本体価格=7,282円(税別)
で詳しい技法が理解できます。

自然の色を染める「刈安(かりやす)」

 刈安という植物で絹に染めた美しく澄んだ黄色をいう。日本の伝統色を代表するひとつといってもよい。
刈安は、本州中部から西の、おもに山地に自生するイネ科の多年生宿根草である。薄(すすき)と見紛うほどよく似ているが、穂が2、3本しかなく、やや丈が低いのが特徴である。

この刈安の産地としては、琵琶湖の東にそびえる伊吹山(いぶきやま)が有名で、『正倉院文書』にも「近江苅安」と記されており、その歴史の深さが知られる。この山の山麓には、針葉樹、広葉樹がおおいつくすように茂っているが、山頂の近くは高木がなく、草原のようになっている。 
したがって、そこには強い太陽が照りつけて、紫外線が強くあたるため、山頂の刈安はそれを除けるために、おのずと大量のフラボンを含んで身を護る必要に迫られることになり、より多くの色素を貯えるのである。

正倉院宝物のなかの黄色系の染め布の多くはこの刈安で染められたものと考えてよく、また「苅安紙」という記述もあるので、和紙の染めにも用いられたと思われる。
平安時代の『延喜式』には、「深黄綾一疋。苅安草大五斤。灰一斗五升。薪六十斤。……」と、染織の材料が列記してある。刈安で染めて濃い黄色にするには、その茎を煎じ、それを薄めた液のなかに糸や紬などの布を入れて繰(く)る。
次に、あらかじめ椿の木灰に湯を注いでその上澄み液を漉(こ)しておき、それを薄めた液のなかで繰って発色させることが記されている。


自然の色を染める 〜技法〜
【刈安 塩瀬の数寄屋袋】

【材料と用具】
塩瀬(200×35cm)・・・1枚(120g)
・刈安 50g
・おはぐろ鉄
60cc
・ボール 大(13リットル) 4個
 ボール 小(6.5リットル) 1個
・ずん胴鍋 小(15リットル) 1個
・泡立て器
・カッターナイフ
・計量カップ
・駒ベラ など
 


【地入れ】
1.塩瀬の地入れをする。
40〜50℃の、少し熱めの風呂くらいの温度の湯に布を入れる。湯がしみるように布全体を浸けて、繰る。


【抽出】
2.1回目の抽出。
刈安120gを3リットルの水または湯に入れて煮出す。沸騰するまでは強火で、沸騰後は少し火を弱めて約20分間煮沸する

3.抽出液を漉す。
煮沸した刈安をざるで漉す。3リットルの水は煮出して3リットル弱の抽出液になる。

4.2回目の抽出。
ざるに残った刈安を1回目と同様に煮沸して漉す。抽出液は2回分を合わせて、6リットル弱になる。

【染色】
5.染浴を作る。
抽出液1リットルを水嚢で漉し、8リットルの水または湯を加えて9リットルの染浴を作る。残りの抽出液は、染色の工程で染まり具合に応じて加えていく。



6.染浴で繰る。
急激に染液がしみ込まない方がよいので、地入れをした布は絞ったりせず、持ち上げて軽く水を切って染浴に入れ、布全体に平均的に染液が染液がなじむように約20分間繰る。このとき、火にかけて徐々に温度を上げる。絹は生地が傷みやすいので、注意しながら50〜60℃くらいにする。塩瀬は生地同士が擦れて傷みやすいので、充分注意する。繰るときには、絶えず液中で布を動かし、気泡を入れないようにすること。布は折れ目がついたり、空気が入ったままでは、その部分が染まらずムラになるので、何度もよく繰る。

7.水洗する。
布についた余分な染液をさっと流すように水洗いする。





【発色】
8. 媒染浴を作る。
おはぐろ鉄20ccを9リットルの水に溶かしてよくかき混ぜる。

9. 媒染浴で繰る。
染浴で繰ったのと同じ要領で約20分間繰る。おはぐろ鉄の液は、15〜20℃にする。

10.水洗する
媒染浴から引き上げた布を7. と同じ要領で水洗いする。ただし、染色後の水洗と、媒染後の水洗は、容器を別にすること。

以上の染色・発色の工程6. 7. 9. 10. を4回繰り返す。1回行い、2回目は染色を終えたあとの水洗で作業を終える。媒染剤の明礬には液体を弾く性質があり、媒染で終えると、柿渋液が布にしみこまなくなるため。

 6. 染色20分間
 7. 水洗
 9. 発色20分間
 10. 水洗

*1回目から高い濃度の染浴にすると、ムラになりやすいので、2回目、3回目と濃度を上げていく。2、3、4回目の染色のとき、それぞれ使った染浴から1リットルを捨て、新たに1リットルずつ抽出液を加える。
*おはぐろ鉄は、2、3、4回目の媒染のとき、それぞれ20ccずつ加える。
*抽出液は翌日までもち越さない。
*もっと色を濃くしたい場合は、染色のあとの水洗で終え、中干しをして、翌日以降1.からの工程を繰り返す



【仕上げ】
11.水洗する。
4回目の媒染を終えて水洗したあと、もう一度新しいきれいな水で布をよく水洗いする。

12.乾燥。
水洗した布は絞らないで、布端を洗濯バサミなどで挟んで陰干しにする。

13.仕上げ。
当て布をして、温度に注意しながらアイロンをかける。