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詳しくは、「日本のデザイン」第1巻
源氏物語 乙女p71に紹介しております。

本は『日本のデザイン』第1巻
源氏物語 紫紅社刊
本体価格=6,800円(税別)で、この本はシリーズになっておりますので詳しくは、紫紅社まで御連絡を。
『源氏物語』季の彩り

秋がだんだん深まっていきます。
『源氏物語』のなかでは、黄朽葉から紅葉へとゆっくりと移ろう秋の景観を描写した場面がいくつもあります。
 今回は、光源氏が、藤壺との間にもうけた冷泉帝が君臨し、自らの地位を不動のものにしていくなかで、六条院の邸を完成させる「少女(おとめ)」の巻から秋の景の美しさを見てみましょう。
「少女」の巻では、光源氏が理想的な館としてかねてから準備していた六条院が完成し、移り住む様子が描かれています。
 館は大きく四季のたたずまいに分けられ、東南は春の庭がめぐらされ、葵の上と光源氏が暮らします。南の西は、いまは冷泉帝の中宮になっておられる六条御息所の娘、秋好中宮のもので、紅葉など秋の風情にしつらえられ、北東は花散里の住まいで夏の趣、そして、西北の冬の景色の館には、近々明石の上が嵯峨から移られる予定になっています。
 旧暦の九月になると、中宮の庭が美しくなり、里帰りされた中宮から紫の上へ愛らしい童女のお使いが立ちます。

  長月になれば、紅葉むらむら色づきて、宮の御前えも言はずおもしろし。風うち吹きたる夕暮に、御箱の蓋に、いろいろの花紅葉をこきまぜて、こなたにたてまつらせたまへり。大きやかなる童女の、濃き衵、紫苑の織物かさねて、赤朽葉の羅の汗衫、いといたうなれて、廊、渡殿の反橋を渡りて参る。うるはしき儀式なれど、童女のをかしきをなむ、えおぼし捨てざりける。さる所にさぶらひなれたれば、もてなし、ありさま、ほかのには似ず、このましうをかし。

 紫の上への贈り物には、秋草や紅葉が華やかに置かれ、それを持参する童女も「濃き」とあるように濃い紫の衵に紫苑や赤朽葉など、秋の草樹をあらわした、美しい襲の衣裳をまとっていたと記されています。
 ここでも、王朝人の「季にあいたる」ことを旨とする心がみられます。そうした六条院の贅を尽くしたたたずまいには、何よりも光源氏が、時の権力を手中に収めたことを物語るものといえましょう。



『源氏物語』「紅葉賀」
深き秋色を映す衣裳

錦秋という言の葉がある。
美麗な絹の色糸を織りこんだ、輝く錦の織物を想わせるような、秋の景色のことをあらわしている。
『源氏物語』のなかで、こうした秋の紅葉の風景をあらわしている場面をあげるとすれば、まず、その名のごとく「紅葉賀」の帖であろう。
 光源氏が十八歳のおり、父である桐壺帝が朱雀院の上皇の御所に行幸されることになった。上皇は、光源氏にとっては祖父にあたる方である。
 天皇が御所を出られるということになれば、朝廷の衛府の武官が儀仗を整えて、皇太子など要職にある親王たちも大勢お供をするのが習わしだった。
光源氏はこの一行のなかにあって、御前で舞楽「青海波」を頭中将とともに舞うことになっていた。

「木高き紅葉のかげに、四十人の垣代、言ひ知らず吹き立てたるものの音どもにあひたる松風、まことに深山おろしと聞こえて吹きまよひ、色々に散り交ふ木の葉のなかより、青海波のかかやき出でたるさま、いと恐ろしきまで見ゆ」

 行幸がおこなわれたのは、「神無月の十日あまりなり」のころで、旧暦の十月十日すぎ、いまの暦でいえば十一月の中旬のことであった。
 京都では紅葉の彩りがもっとも美しい時期である。
 松林の常磐の緑を背景に、赤く、あるいは黄色く染まった木の葉が散り交った、まさに錦秋の名にふさわしいなかを、光源氏が青海波を舞う。この貴公子の佇まいは、なんとも恐ろしいほどの美しさであると作者・紫式部は表現している。
 日暮れのころになって、ほんの少し時雨があり、空までもがその美しさに涙しているようだと、そのあと続けている。
 日本人は四季それぞれの美しさを愛でながら折々の暮らしをおくっているが、春の桜、秋の紅葉のときはとりわけ心を配り、その最も美しい姿に感動してきた。
それゆえ『源氏物語』のなかのこうした描写は、きわめて印象的であるといえるだろう。
 行幸のおり、桐壺帝の最愛の人である藤壺は、実はこのとき光源氏の子を宿していて、参加していなかったが、一行に参列した女房や童女、そして朱雀院におられる女人たちも光源氏の輝くような舞楽やほかの親王の舞などを観賞していた。
 その女人たちは、おそらく京の街や山の樹々が赤や黄色に染まったように、自らの衣裳に茜の赤や黄色などに染められた襲衣裳をまとって、まさに「時にあひたる」秋の彩りを華やかに演出していたことと想われるのである。
 染色において燃えるような紅葉をあらわすには、わずかに黄味のある茜を使う。茜は「赤い根」の意味で、根に色素がふくまれている。少し青味の強い紅葉をあらわすには、蘇芳という染料を用いる。
 黄色の染料は、やはり刈安がもっともふさわしいが、少し赤味を加えたいときは、支子の実を用いるのもいい。
 どの染料も古来使われてきたもので、一千年も前の染職人たちも、王朝の女人たちの美しい装いにこれらの染料を用いて対応していたのである。