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若 紫
光源氏が紫の上と出会う重要な一帖である。
光源氏は治療のため北の山へ向かう。
三月の晦日なれば、京の花ざかりはみな過ぎにけり。
山の桜はまださかりにて、……
都では桜の花が散り、 山のほうはまだ残っているというころである。
光源氏は僧都の加持をうけたあと、とある小柴垣のある庵へ向かう。
きよげなるおとな二人ばかり、さては童女(わらはべ)ぞ出で入り遊ぶ。中に十(とを)ばかりにやあらむと見えて、白き衣、山吹などのなれたる着て、走り来たる女子(をんなご)、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじくおひさき見えて、うつくしげなる容貌(かたち)なり。
そこには童女が遊んでいたが、その中に「白き衣、山吹などのなれたる着て」 走り出てきた女の子は、美しい容姿であった。
桜の花が散ったあと、山吹が美しい赤みのある黄色い花をつける。この気品のある少女は「季にあひたる」襲(かさね)の衣装を着ていて、それが夕陽に透けるさま、 成人すればさぞかし麗しい人になるように思われた。 紫の上と出会う、感動的な場面である。
ここでは支子(くちなし)の実の黄と、刈安(かりやす)の黄色で染めて、 山吹の襲をあらわし、文に沿うて、白き衣を添えて、 夕陽に輝くような山吹の襲をあらわしたものである。
撮影/森 寛一
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